投資銀行御用達の有料情報ベンター10選

投資銀行の日々

ジュニアバンカーの仕事の8割は分析ワーク

ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなどの外資系投資銀行は2020年現在も東大早慶の就職活動生からの人気企業ランキング上位に入るなど相変わらず健在のようです。

M&Aや資金調達アドバイザリー業務と聞いて「グローバルかつ大規模な仕事を若いうちからできる!」と憧れを持っている学生さんも多いことと思います。

何より自分がそうでしたから(笑)

ただし野村證券などの日系投資銀行を含め、投資銀行のジュニアバンカーの仕事は8割以上が分析ワークになります。

上司であるVPやディレクターが顧客訪問する際の説明資料を作るのが主な仕事になるため、若いうちは徹底的に正確かつ綺麗な資料を作ることが求められ、資料に盛り込むべきファクトと伝えたいメッセージとの整合性を取る反復作業が続きます。

もっと詳しく投資銀行のジュニア生活について知りたい人は、下記の記事を参考にしてみてください。

情報取得手段としての有料ベンダー

そういうわけで資料作成の前提として財務情報や企業関係のニュースを取得する必要があるわけですが、さすがにいちいち企業の有価証券報告書や決算短信の数値をExcelにベタ打ちして入力したり、ニュースをGoogle検索で探していてはいくら時間があっても足りません。

(勿論細かい勘定項目の確認のために有報はしばしば確認しますし、Google検索も使うのですがメインとなる情報取得方法ではありません)

ジュニアの激務事情も加味して、投資銀行は会社としていくつかの情報集約ベンダーと契約して情報取得の円滑化を図っています。

各投資銀行によってメインで使っているベンダーは異なりますが、筆者の投資銀行時代の経験をもとにこの辺りが御用達でないかというベンダーをまとめてみました。

入社後にしか使えないベンダーなので、紹介したところで「So What?」な感は否めませんが(笑)、投資銀行を目指す新卒就活生・転職希望者の方は実際に業務に入った時のイメージを膨らます足しにしてください。

投資銀行御用達の有料ベンダー【ニュース系】

さてまずは個社や業界のニュースを追うためにバンカーが使っているベンダーをご紹介します。

①日経テレコン

日本のビジネスパーソンとしては当たり前のように読んでおくべき日経新聞ですが、投資銀行も会社として契約しています。

日経テレコンは日経新聞朝刊・夕刊、日経電子版、日経ビジネス、週刊東洋経済など多くの主要国内媒体の記事をアーカイブしており、記事の総数は1.2億本というから驚き。

使い方としては、気になるキーワードや企業を登録しておいて毎日決まった時間にメールで届くようにするアラート機能が第一。

第二は例えば株価チャートを作成しているときに「●●年●●月に株価が急落してるしてるけどこの理由は何だろう?」と疑問が湧いた際に、クイックに日経テレコンで日付を絞って検索し、該当しそうなカタリストを探すという感じで使います。

個社要因として株価が動きがちなのは業績見通しの上方/下方修正、M&Aの公表などでしょうか。

あとはマクロ要因としてリーマンショックや日中貿易摩擦のような経済不安、東日本大震災やCOVID-19(新型コロナウィルス)のような災害系で日経やS&P500が一斉に下落するようなパターン。

こういった要因を調べて、必要あれば適宜株価チャートにアノテーション(注釈)として付けておくこともよくやります。

②Factiva

日経テレコンと並んで契約していることが多いのがFactiva(ファクティバ)というベンダー。

ダヴ・ジョーンズが保有するニュース提供サービスであり、日経新聞以外の多くの媒体のニュースが閲覧できます。

ロイター等の海外系ニュースが多めですが、中には業界別の日本語専門新聞等までカバーされており、非常に有益なサービスです。

日経新聞以外にも情報ソースが欲しい場合や、海外のニュースを取得したい場合はFactivaを使うという棲み分けがあったように思います。

Factivaも日経テレコン同様にアラート設定機能があるため、案件中などは案件に関係ある企業名やキーワードを登録しておいて、何か新着情報があれば案件チームに共有するというような作業でかなり重宝しました。

③Merger Market

世に公表されているM&Aの概要資料が見られるベンダーサイトです。

Merger Market自身が独自に取材していることも多く、Rumorベースの案件情報や公表前にリークされた情報ベースのものも綺麗にまとまっています。

案件規模やアドバイザー名がプレスリリース上では非公表になっている際でも、Merger Marketでは取材に基づいて公表されていたりすることもあるので、+αで案件情報を知りたい時などはかなり便利です。

ただしあくまでMerger Marketの取材ベースの情報ではあるので、資料作成時に引用する際は注釈等にディスクレーマーを付けておいたりと多少留意する必要はありました。

サイトから案件概要をPDFでダウンロードできるので、必要に応じてそれをチームに回覧したりもしていました。

M&A案件や買収・売却提案のピッチ作成時には何かと使い勝手のいいベンダーでした。

投資銀行御用達の有料ベンダー【財務系】

ニュースを追うと同時に情報として大事になってくるのは財務周りのファンダメンタルズや株主構成などの情報。

こういった情報はGoogle検索でいちいち拾ってくることも可能ですが、そんなことをしていたら仕事を捌ききれず過労死してしまいます。

というわけでこちらについてもある程度情報を集約してくれている有料ベンダーと契約をして時間短縮に努めているというわけです。

①Fact Set

外資系投資銀行ではわりかし使われている印象の多いFact Set。

ウェブサイト経由でアクセスして株主構成/マーケット情報(株価・時価総額・企業価値)/財務三表実績値/アナリスト予想値/会社予想値などといった分析に必要な情報を閲覧することが出来ます。

加えて有用なのがExcelのプラグイン。

投資銀行のExcelにはあらかじめこういった有料ベンダーのプラグインが埋め込まれており、専用の関数を入力すると自動的に株価や財務数値を引っ張ってくることが出来る仕組みになっています。

案件中などは事業計画などの数値をベースにモデルを組んだりすることが多いのであまりプラグインを使う機会はありませんが、例えば足許のPERやEV/EBITDAの数値や過去1年の推移などのチャートを作る際はプラグインはヘビロテです。

また類似企業比較分析(Comparable Companies Analysis:俗に言うComps分析)などにおいても、Tickerだけを変えれば企業別に財務数値を横比較できるので重宝します。

②Capital IQ

Capital IQはFact Setと並んでよく使われているベンダーです。

ベンダーの中でもユーザーインターフェースが整っており、非常に見やすい印象を受けました。

Capital IQもFact Set同様にウェブページとExcelプラグインが存在し、財務数値や将来予想値を引っ張ってくることが出来ます。

特にピッチ活動などでCompsの数字をひと目で見せたい時などはパパパッと数字を引っ張ってこれるので、Fact SetかCapital IQがないと今の投資銀行ジュニアは生きていけないと思います(笑)

③Eikon(旧Thomson One)

Fact Set、Capital IQに次いでよく使われるベンダーがEikon(エイコン)です。

以前はトムソン・ロイターの中の一事業として存在していましたが、2019年にスピンオフされてトムソン・ロイターとブラックストーンの合弁企業(Refinitiv)が運営元になったため、名称がEikonに変わりました。

Eikonが使える点としては、リサーチアナリストレポートが取得できる点と株主構成がより詳細まで分かる点でしょうか。

投資銀行の資料作成においては「リサーチアナリストがどう見ているか」という点で、アナリストレポートのコメントを引用して資本市場の見方の代弁であることを示す場合が多いため、アナリストレポートのPDFでのダウンロードは必須です。

Fact SetやCapital IQにもその機能があるのですが、アナリストレポートに関しては網羅的かつ分かりやすくまとまっているのはEikonだと思います。

ただ投資銀行によってはEikonとは契約せずCapital IQからアナリストレポートを取得するように絞っているケースなどもあり、使用率は多少まちまちかもしれません。

④Bloomberg

金融の情報ベンダーとして一番有名なのはおそらくブルームバークでしょう。

ただしブルームバークは主にマーケッツ部門の社員がよく使うイメージで、投資銀行部門においてはそこまで頻繁に使われるわけではありません。

Excelプラグインのサービスもありますが、おおよそFact SetとCapital IQで事足りてしまうので使われる機会は少ないかもしれません。

また契約によってはオフィスに置いてある専用端末経由でしかブルームバーグのコンテンツにアクセスできない場合もあり、オフィスにいない際は情報アクセスできないことは難点の1つでした。

ただし社債の利回りやマーケット指数などはほぼリアルタイムに更新されていくので、そういった数値を引用する場合はブルームバーグを使用することもあります。

⑤QUICK

日経新聞の図表の出典に「QUICKコンセンサス」と書かれていることが多いと思いますが、その元のベンダーがこのQUICKです。

なぜ日経でよく引用されるかと言えば、QUICKも日経グループの一員だからにほかありません。

他のベンダー同様にリサーチアナリストの来期予想の平均値(一般的にこれをコンセンサスと言います)をまとめてくれているので、ベンダーとしては非常に使いやすいと思います。

特に日系投資銀行で多く使われている印象がありますね。

⑥SPEEDA

学生の皆さんでも商学部などに通われている人であればアカウントを学校から付与されているかもしれないSPEEDA。

ベンチャー企業のユーザベースが運営する情報ベンダーサービスです。

Fact SetやCapital IQ等の外資系ベンダーに比べてSPEEDAは使用料金が比較的安く、個人投資家でも契約できるくらいの金額なのが魅力の一つです。

ただし例えば業界レポートであったり来期コンセンサス予想値であったりのクオリティに関しては、他のベンダーと比べて時々「?」となることもありました。

とはいえ本当にザっとその業界・企業のことが知りたいというニーズにはかなり応えてくれたサービスだと思います。

⑦eol

eol(イーオーエル)はベンダーと呼んでいいのかよく分からないですが、一応ここに入れておきます。

端的に言うと、有価証券報告書やプレスリリースがずいぶん昔のものまで保存されているウェブサイトになります。

有価証券報告書は比較的新しいものだと各企業のウェブサイトやTD Netにまとまっていますが、20年前のもの等になってくると公表を終えてしまっている場合も多いわけです。

「どうしても古い有報やプレスを参照したい!」というニッチなニーズに応えてくれたのがeolです。

ある個社を深掘りしてこれまでの戦略の歴史を紐解くような資料を作成したり、業界の流れを説明した汎用資料を作ったりする際にたまに使った覚えがあります。

まとめ

というわけで、今回は投資銀行実務においてヘビロテする情報集約ベンダーについてご紹介しました。

これだけ情報取得の時間を短縮してもなお激務な投資銀行業界ではありますが、このベンダーの面々には日々助けられていました。

ぜひ皆さんも投資銀行に入社する機会があれば、こういったベンダーを存分に使って存分に分析してみてください。

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